『欲動』


INTRODUCTION


女優・プロデューサー・監督、あらゆる枠を超えた表現者である杉野希妃の長編監督劇場初公開作品。2010年に自身が主演兼プロデュースした『歓待』(深田晃司監督)が東京国際映画祭日本映画・ある視点部門作品賞などを受賞した他、100以上の映画祭からオファー殺到し話題となった杉野が監督兼出演をしている今作はアジア屈指のリゾート地バリ島を舞台に繰り広げられる、男女の性愛と人間の生死を描いた物語。男と女の複雑な心理描写を女性監督ならではの繊細なタッチで描く。さらに切なくも美しいダイナミックなベッドシーンは官能的である。ガムラン(東南アジアの民族音楽)による音楽やケチャ(バリ島で行われる男声合唱による呪術的な踊り)などバリ島オールロケシーンは圧巻である。2012年のベルリン映画祭で話題になった『動物園からのポストカード』のスタッフも多く参加している。病に苦しむ夫を持つヒロインを『愛の渦』のOL役が記憶に新しい三津谷葉子が体当たりで演じ、その夫をフジテレビ系連続ドラマ「昼顏~平日午後3時の恋人たち~」に出演の今もっともセクシーな俳優、斎藤工が演じる。

STORY


勢津ユリ(三津谷葉子)とその夫・千紘(斎藤工)は臨月を迎えた千紘の妹・九美(杉野希妃)の出産に立ち会うため、バリを訪れた。  異国で出産する九美にとって兄がバリまで来てくれたことは嬉しく、また看護師であるユリの存在も心強かったが、その一方で心臓に重い病を抱える千紘にとってこの旅は危険を伴うものだった。  九美の夫・ルークを含め4人でバリ観光を満喫していたが、立ち寄ったカフェで何気ない会話の中で発せられた千紘の「日本に帰りたくない」という一言をきっかけにユリと千紘の口論が始まり、看護師であるユリに対し千紘が吐いた「人の死に慣れたお前が嫌なんだ」という決定的な一言によってユリはその場を去ってしまう。  バリの広大なライスフィールドをさまようユリだが歩き疲れて座り込むと先ほどのカフェにいた日本人男性の木村がユリの傍に車を停め、気分転換にクタに行こうと声を掛ける。誘いに応じ、クタのナイトクラブへ。ユリは大音量で鳴り響く音楽と周りの雰囲気に圧倒され気後れするものの、次第に開放感を感じ始め、その表情には明るさが戻ってくる。そんなユリに地元ビーチのジゴロ・ワヤンが熱い視線を送るが、危うさを感じたユリはワヤンを避ける。するとクラブの通路では木村が地元の青年・イキと激しく絡み合っていた。思いがけない光景を前に魅入るユリ。そのユリの背後からワヤンが強引に彼女の体を奪おうとする。必死の抵抗で逃げることが出来たユリだったが、その心には怯えと共に突き動く欲動の感覚がはっきりと残っていた。 そして、翌日、ユリは千紘とのわだかまりを未だ感じながらもワヤンは再び出会うことになる。

監督ステートメント


『欲動』は、バリ島の自然や生命力に触れながら、生と死の狭間で彷徨う夫婦の話です。撮影中はハプニングの連続でしたが、どんな状況でも主演のお二人は落ち着き、素晴らしい演技を見せてくれました。三津谷さん、斎藤さんの生身の魅力が存分に詰まった作品になりました。
今回、インドネシア人スタッフが半分以上という座組みでした。彼らの笑顔や柔軟性にどんなに助けられたことか!沢山の奇跡を目にしました。映画の内容においても、制作過程においても、言語や人種や性別を超えて人が繋がっていく、純粋なアジア映画になったと思います。
9年前、自分のデビュー作が初上映された釜山国際映画祭に、監督として参加できるなんて光栄です。

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