INTRODUCTION

山と川と地下水脈が育む豊かな海の町、岩手県大槌町
国と県の提示した巨大な防潮堤にNOと言った浜の物語


  漁師を本気でやる気のない人には
  おひきとり願いたい

  ---阿部力


   もう防潮堤には頼らないんだ 

   ---川口博美 

弁天様を祀る蓬莱島(ひょっこりひょうたん島のモデルの島)が浮かぶ町、岩手県大槌の赤浜で生まれたロックを愛する漁師・阿部力(つとむ)は「漁師は水揚げしてなんぼ」と、海で体をはってきた。 2011年、東日本を襲った大震災で、町を「土色の壁のような波」が襲った。最大22mの津波と火災により、死者・不明者1280余人、町の85%が喪失した。半年後、国と県は、5階建てビルと同じ、14.5mの高さの巨大防潮堤で海岸線を囲う復興計画を決める。 「海が見えねえじゃねぇか!」そんな中、赤浜の住民は巨大防潮堤に反対の声をあげる。「人間が作ったものは壊れる」津波で家族を亡くした“赤浜の復興を考える会”会長の川口博美は国の提案を拒否。「自然をないがしろにして復興はない」と阿部は、手間ひまかけて育てたワカメ、昆布、ホヤ、牡蠣を、消費者に届けることに心血を注ぐ。自然を抑え込む発想とは違う共に歩む知恵。ここに、わたしたちの進むべき未来もある。

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【三陸の防潮堤】

震災前、岩手、宮城、福島3県に総延長で約300 km あった防潮堤は、東日本大震災の地震による揺れや津波で約3分の2が全半壊。国と3県は沿岸の総延長約390 kmの防潮堤整備を新たに計画。約1兆円を投じる国家復興事業が始まった。土地が急峻な三陸地方では、襲ってきた津波が、39.4mの高さになった所もあった。最大22mの津波が襲来した大槌町では、その津波を防ぐためには25.5mの高さの防潮堤が必要とされた。しかし、この高さの防潮堤を建設するのは、現実的でないと、数百年に一度の頻度で襲来する明治三陸津波を対象として、14.5mの防潮堤の建設が、国と県から提示された。巨大防潮堤の建設費は国が負担するが、維持管理する費用は、県の負担となる。コンクリートの耐久年数は50年から100年と言われるが、風化が激しい海岸線の堤防は予想以上の維持管理、補修費が必要になると考えられる。巨額の費用が、財源不足の地方自治体に重くのしかかることが予測される。

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